事例紹介 ヨーロッパミヤマ×ウルトラマット

1♀からワンセットで幼虫90頭を回収

外国産ミヤマクワガタの中では比較的入手が容易で、大型になることから人気のヨーロッパミヤマクワガタ(ユーロミヤマ)。産卵そのものは難しくない種類ですが、産卵用のマットに「ウルトラマット」を用いたところ、ワンペアの1回だけのセットから合計90頭の幼虫が出てきました。

(1)産卵セットのデータ
親虫 ♂65mm、♀40mm。南仏産・天然採集品
産卵環境 ウルトラマット、ハイパーカワラ材L14SE×2本
容器 蓋付きコンテナケース(小型の衣装ケース)
横幅35cm×奥行25cm×高さ22cm
セット方法 1)ウルトラマットを約15リッター使用。下層のマット(底から5cmほど)は強く押し固める。
2)樹皮をはがしたハイパーカワラ材を2本設置。周りを上質発酵マットで埋める。材は完全にマットに埋め込んだ状態。
3)容器の8割り程度をマットで埋め、表面に転倒防止用の木切れを置いてセット完了。
セット期間 2006年7月11日~11月15日
※雌雄を同居させた状態で最後まで飼育。セットはこの1回のみ
結果 2006年11月15日回収
3令×56、2令×32、1令×2 = 計90頭
備考 セット期間が長かった(産卵を確認後、様子を見るためそのまま放置してあった)ため、半数以上が終令になっていましたが、「共食い」による死亡個体はほとんど見られませんでした。また、初令幼虫の数は多くなく、この90頭の産卵時期は大きな開きがないものと考えられました。
幼虫は、そのほとんどをマットの中から回収しています。一部、ハイパーカワラ材に食い込んだ幼虫が見られましたが、材に産卵されたのではなく、回収時の様子からマット中より進入した様子でした。
※ミヤマはマット産みのため、材には通常、直接産卵はしないと思われます。


(2)産卵セットからの幼虫回収
▼セットに使用した容器
小型の衣装ケースを使用しました。ケースの大きさは、35cm×25cm×22cm。特大サイズのプラケースより、さらに一回り大きな感じです。

7月11日にセットし、その後、親虫が生きている間、1週間に1回程度ゼリー交換をするだけで、回収時までそのまま管理。そろそろ寒くなってきたので、幼虫を回収することにしました。


▼回収:2006.11.15(産卵セットの中身をひっくり返したところ)

まるまるとした幼虫が、マットからごろごろごろ! まるで、カブト幼虫の回収時のようです。
ケースの外からも幼虫は見えていましたが、ケースから出してみるまで、これほどたくさんいるとは思いませんでした。


▼カワラ材に食い込んだ終令幼虫
一部の幼虫は、マットに埋め込んであった「ハイパーカワラ材」に入っていました。
ただし、材の中で生まれたのではなく、後から材に進入したようです。


▼回収した幼虫たち

取り出した幼虫を数えてみると、実に合計90頭! ヨーロッパミヤマの産卵はそう難しくありませんが、1頭のメスが1回のセットで産んだ数としては、当方での新記録になりました。

繁殖形態としては、倒木など朽ち木近辺の腐食にばらまき産卵をし、成長に適した材に辿り着いたものだけが生き延びる、というような形でしょうか。

ほか、マットをひっくり返したときに材で圧迫して落としてしまったものなど、このほかに4頭の幼虫がいました。


他の例
上記のほか、同時期に2セット組んでいましたが、次のような結果になりました。
いずれもヨーロッパミヤマ(Lucanus cervus cervus)です。

●セット開始:2006年7月11日~
●産卵素材 :ウルトラマット+ハイパーカワラ材L14×1本
●回収   :2006年9月23日
●結果   :2令×30、1令×4。合計34頭


●セット開始:2006年7月11日~
●産卵素材 :ウルトラマット+ハイパーレイシ材S×3本
●回収   :2006年12月11日
●結果   :3令×38、2令×9。合計47頭

12月の常温下でも元気いっぱいのケルブス幼虫。蛇足ですが、日本の気候でも生存可能ですので、産卵済みマットを安易に捨てないなど、注意を要します。

ハイパーレイシ材Sを埋め込んであったセットは、材がほとんど食べられてしまっていて、回収時には断片しか残っていませんでした。



そのほか
タランドス、レギウスの初令幼虫管理にも適しています。

孵化直後、ヘッドカプセルが色づいたタイミングで「ウルトラマット」に移し、半月ほど経過したレギウス初令幼虫。初令中期まで成長し、マットを体内に十分取り込んでいます。ここまで育ってからカワラタケ菌糸ビンに入れてやれば、その後、順調に成長してくれます。

孵化したての幼虫をすぐ菌糸ビンに入れると菌に巻かれて負けてしまうことが多いため、充分に腐朽したマットで、ある程度の大きさまで育てるのがセオリーです。微粒子完熟タイプである「ウルトラマット」は、初令幼虫の育成管理にも適しています。



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※「上質発酵マット」から「ウルトラマット」に商品名が変わりました。

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