事例紹介 タランドス×ハイパーレイシ材

タランドスやレギウスとの相性抜群の「ハイパーレイシ材」

通常の産卵木にはなかなか産んでくれないタランドゥスやレギウスですが、「ハイパーレイシ材」との相性は抜群です。
以下、ハイパーレイシ材を使ったタランドスオオツヤクワガタの産卵例をご紹介します。

(1)親虫の入手後、十分な栄養を与えます
タランドスは、クワガタムシにしてはとてもたくさんのエサを食べます。産卵後のメスは1カ月以上にわたり材の中で卵を守るようにじっとしていることが少なくなく、そうした習性も関係しているのかもしれません。16gのゼリーが数日でなくなりますので、十分な量のエサを与えるようにします。
(2)十分な栄養を摂らせたあと、産卵用のセットに移します
材はマットに埋め込む必要はありません。転がりさえしなければOK。
※この例では樹皮をはがしていますが、現在は樹皮をつけたままセットすることがほとんどです。

今回のセット内容
親虫 ♂62mm、♀49mm。コンゴ産・天然採集品
産卵材 ハイパーレイシ材M×1本
容器 プラケース中(約7.5リッター)
セット方法 1)容器底面に数センチ、埋め込みマットをうすく敷きます。
2)その上に材を設置しますが、オオクワガタのようにマットに埋め込むことはしません。むしろ埋め込むことで、タランドゥス、レギウスには特に禁忌である「材の中の酸欠」を招くことがありますので、マットで埋めないほうが良いです。
3)転倒死防止用の木切れ、ゼリーを入れてセット完了です。
セット期間 2003年7月10日~8月8日
※飼育温度は常温(ただし、所在地が中標高のため、平地より3~4度ほど気温が低め。2003年は7~8月に平年以下の気温が続いたため、ピーク時でも30度未満)
備考 このメスは天然採集品(コンゴ産)で、右後脚フセツが欠損したスレ個体でしたが、ゼリーを与えながら、念のために♂と交尾させました。
この例では菌糸膜や樹皮をまるごと剥いていますが、剥かなくても母虫は自分の力で材の中に潜り込み産卵します。オオクワガタのように材の表面に産卵することはありませんので、樹皮はつけたままで構いません。
その他 容器は半密閉型のコンテナなどより、プラケースなどのほうが良いように思います。今回のセットでは、蓋と容器本体の間に新聞紙を挟み、湿気が容器内にこもるのを避けました。霧吹きによる加湿も途中、まったくしていません(ただし、冷暖房を効かせた飼育環境では、過度の乾燥に注意する必要があります)。

このメスは産卵意欲が高かったようで、セットした翌々日には材の側面をかじり、中に潜り込んでいました。

その後もメスは材に潜ったままで変化がありません。

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そのまましばらく放置しておいたところ、再びゼリーを食べているメスを発見。
メスは次の産卵セットに移し替えます。

※上記のようにメスが材から自分で出てくることもありますが、自分が掘った産卵用坑道の入り口で卵を守るようにじっとしていて、材から出てこないことも珍しくありません。


こういうときは産卵がうまくいっている場合が多いです。メスを傷つけないよう注意しながら材から離し、次の産卵にむけて休ませます。


(3)いよいよ材割りです
メスを別セットに移し替えた後、1回目の産卵セットはそのままの状態で保管。

メスを離してから約3週間後の8月末、ケースから材を取り出し割ってみました。


ハイパーレイシ材の中には、産卵床が作られています。これは母虫が材をかみ砕いて作ったもので、大きさはゴルフボールくらい。一定の空間にオガコが押し固められ、詰まっています。母虫は、自分が作った産卵床と材との境界部分に卵を産み落としてゆきます。

そのオガコを取り除いてみると・・・



タランドス幼虫が現れました。ふ化したあと、材の中を食べ進んでいました。


続けて割ってみたところ・・・



2令が1頭、初令が7頭、計8頭出てきました。

Mサイズの材に1回に産む数としては標準的な数と言えますが、なかにはもっとたくさん産むケースもあり、お客様から次のようなご連絡をいただきました。


東京都 IY様
ハイパーレイシ材の威力はものすごいものがありますね。3ヶ月間あの手この手で4度にわたってセットし続けても産卵に至らなかったタランドゥス2♀がハイパーレイシ材セット後2♀ともわずか3日で潜入し、それぞれ 10以上もの産卵に至りました。しかも2度目のセットにおいても同様の状態です。

現在レギウスのブリードも開始したところですが、メソトプス族にはこの材以外は使用する気にはなれません。

また、御社のカワラ菌糸ビンもタランドゥスのみならず、オウゴンオニにも相性が大変良く他社のカワラ菌糸ビンよりも成長がよいようです。

今後も良い材の提供を期待しています。
福岡県 TK様
それまで、他社カワラ材・レイシ材(砂埋め乾燥)等の材をセットしタランドスの産卵を試みましたがどれも失敗に終わりました。地元の御社のハイパーレイシ材の評判を聴き使用させていただいたところ、♀は2日後には材に潜り約25日後には11匹の幼虫を得ることができました。

また、再度御社ハイパーレイシ材とこの♀をセットすることにより16匹の幼虫を得ることができました。これだけでは終わりませんでした。WILDの別♀でも同様のセットを行ったところ12匹の幼虫を得ました。

さらに、現在WF1の♀でも同様のセットを実施中ですが、すでに材の中に♀が潜り込み一ヶ月が経っております。その1ヶ月間餌をまったく食べていないので上記WILD♀同様に産卵していると思われます。

セット方法は至って簡単で乾燥したマットの上に御社ハイパーレイシ材の白い菌糸と樹皮を剥いで転がらないように置くだけです。私が試した3♀(WILD×2/WF1×1)ではすべて1週間以内に♀が材に穿孔して産卵を開始していました。その間♀は、一切餌ゼリーを食べませんでした。
   
現在(5月初旬)のところ
・WILD♀[1] 1回目=幼虫11匹 2回目=幼虫16匹  計27匹
・WILD♀[2] 1回目=幼虫12匹 2回目=セット待ち
・WF1♀     1回目=セット後すでに♀が材に潜り1ヶ月経過 WILD♀同様に産卵の期待大

すでに2♀・3回のセットで(WILD[1]2回 WILD[2]1回)39匹幼虫を得ることが出来ました。このままどこまで行くか試して行こうと思っております。


追記

その後、WF1のタランドス♀も産卵し7匹の幼虫を得ることが出来ました。これで、WILD2♀・累代♀共に産卵幼虫採取が出来ました。
静岡県 HH様
ハイパーレイシ材のMですが、ものすごい威力ですね。
去年の夏から、タランドスの産卵に砂埋めレイシ材やカワラなど、いろんな材を試してきましたが、すべて完敗していました。ところが、今回1月半(12月中~1月末)のセットで、1本からなんと1令が14頭出てきました。しかも、ピンポン玉2個分ぐらいの極めて狭い範囲からです。卵はゼロでした。親虫の大きさは44ミリです。

親虫が詰め込んだ木くずを指で一つまみとると、すでにそこに1頭が顔をだしました。さらに木くずを出していくと、次々と木くずの中から幼虫が出てきました。
ほとんどは木くずの中からでてきましたが、3頭ほどは少し材に食い込んでいました。ですから、その産卵木はほとんど原型のままなので、再びセットしました。

材の白い部分に誘引効果があると勝手に考え、袋から出して皮もむかずにそのまま45度に立てた状態で2/3までマットに埋めて使用しました。マットは普通の埋め込みマットですが、水分は多めでした。産卵場所は材の下方の側面、マットに埋まっているケースの底に近い部分です。
温度は温室が貧弱なため、日中は23℃、夜は19℃ぐらいになっていました。セットしてから♀の姿は一度も見ていませんでしたが、一週間に一度だけ餌を変える以外はいっさいケースをあけない状況にしていました。

以上が今回の状況です。あくまで私の温室で起こったことで、どの条件が好結果につながったのかは、私自身よくわかっていません。しかし、ハイパーレイシ材でなければ起こらなかったと考えています。
栃木県 IK様
タランドスを数ペア飼育中です。うち、ハイパーレイシ材をセットしたペアは、雌がすべて材に潜って産卵しました。

最初の1ペアは普通の霊芝材などを使用しても全然産んでくれなかったんですが、入手から約半年後、諦め半分で最後にハイパーレイシ材を使っみました。そうしたら、10数個の卵を確認。残念ながら孵化まで至らなかったんですが、卵を産んだのはこれが初めてでした。

さらに、これとは別の親虫2ペアにもハイパーレイシ材をセット。1回のセットでだいたい15程度、これまでの合計で50以上の卵や幼虫を得ることができました。回収時期が早すぎたためかなり落ちてしまいましたが、産卵に関してはとても順調でした。

産む気のある雌はセットした翌日には材に潜って産卵をはじめます。これまで産ませられなかったことを考えると、ハイパーレイシ材はすごいと思います。

反省点としては、やはり割出時期。♀親が材に潜ってから2カ月以上の間をあけ、2令になってから回収したほうがよかったと思います。

また、♀のかかり具合(卵の受精率)によって、孵化率が左右される様子です。最初は材の湿度に問題があるのだろうかと思っていましたが、湿っぽい材でも卵によっては問題なくかえっていました。
ちなみに、飼育部屋は常時クーラーを効かせ、25~26度の低温管理。ケースの底に数センチ、クヌギ埋め込みマットをしいただけで材はマットに埋め込まず、週2回ほどの頻度で、マット表面が乾かない程度に霧吹きをしていました。


このほかにもタランドスやレギウスが産んだというご連絡をたくさんいただいています。
ご連絡くださった皆様、本当にありがとうございました。


(追記)2回目以降
今回の例にあげたペアは、その後2回セットし、さらに幼虫を回収しました。

【第2回目の産卵セット】
●セット期間:2003年8月8日~9月19日
●割出   :10月14日
●使用材  :ハイパーレイシ材L×1本
●結果   :2令×5頭、1令×2頭=7頭


ちょっとわかりにくいですが、材の内部は幼虫により多数の坑道がうがたれています。


セットから2カ月強後に割り出したところ、材の中で多くの幼虫が2令まで成長していました。


【第3回目の産卵セット】
●セット期間:2003年10月12日~11月4日
●割出   :11月26日
●使用材  :ハイパーレイシ材M×1本
●結果   :1令×4頭、2令×1頭=5頭
※備考   :#2と#3の間に1回セットしましたが、メスがなかなか潜らなかったため、セットから一旦取りだして管理。再交尾と休養のため、しばらくの間オスといっしょにしたのち、再セットしました。


今回セットしたのは、レイシによる腐朽が進み、かなり柔らかくなっている材でした。
材は、手でぼろぼろ崩せる状態になっています。


3回目のセットから出てきた幼虫。この写真を撮ったあと、さらに初令が1頭、材から出てきました。


まとめ
最終的にこのペアからは、合計20頭の幼虫を回収しました。これらの幼虫は、その後、すべてカワラタケの菌糸ビンで育てました。産卵にはレイシ(マンネンタケ)との相性が(ハイパーカワラ材よりずっと)良いのですが、幼虫飼育にはカワラタケが合っています。


タランドスに限らず、成否を含めた産卵結果は母虫のコンディション(成熟度合い、交尾の成否など)により異なりますが、菌糸材の他の菌種や、土埋め霊芝材などほかの産卵材に比べ、ハイパーレイシ材は非常に安定したタランドスの産卵実績を持っています。

これまで一度も同種の産卵に成功したことがないという方がいらっしゃいましたら、「ハイパーレイシ材」をぜひお試しください。


タランドゥス幼虫の飼育には、「カワラタケ菌床」ががお薦めです。一般的な菌種の中ではもっとも相性がよく、80mmオーバーが狙えます。




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タランドス産卵の大事なポイントをおさえてありますので、そちらもご参照ください。




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